ゲーム・フィッシングに求められる重要な要素の一つに、リールのドラグ機能があります。ドラグとは、設定張力以上の力がラインに働くと、ライン・スプールが滑り、逆回転することにより、設定張力を超す力がラインにかからないようにするための機構です。
30ポンド(15Kg)テスト・ラインで、1,103ポンド(500.31Kg)のブルーマーリンが記録されたのも、優秀なアングラーのテクニックと同時に、優れたドラグ機能を持つリールがあったからだとも言えるでしよう。ちなみに、この大記録とラインの強度比率は何と36:1という数値になります。ビッグゲームリールに求められる最も重要な要素は、堅牢で、ドラグ調整機能が正確で、かつドラグ有効幅の広いもの・充分なラインキャパシティーのあるもの、といった2点に絞られます。
ドラグシステム
ビッグゲームリールのドラグ・システムには、スタードラグ方式と、レバードラグ方式の2種類があります、しかし、操作性、ドラグ調整の正確度などからは、レバードラグ方式の方に分があるようです、レバードラグ方式では、アングラーはドラグポジションを常に視認できることから、微調整やドラグ設定も容易です、またレバードラグリールには、ストライキングドラグ・ポイントで、一時的にレバーの動きを制限できるストライキングストップボタンがついているものもあります。このボタンは、それ以上のドラグ強度が必要とされる時には、その停止装置を簡単に解除することが出来ます。
レバードラグは瞬時に操作でき、スタードラグよりも酷使に耐え、狂いも少ないという評価があります。確かにレバードラグリールは、巨魚とのパワフルなファイトに際し、よより安定した働きを見せてくれますし、ドラグの調整可能範囲が大きいことも魅力です。
しかし、これはスタードラグリールがレバードラグリールに対して劣っているということではなく、スタードラグは、プレートやワッシャーの消耗が激しいものの、安価に、しかも簡単に取り替えることが出来るため、メンテナンスと操作を熟知すれば、レバードラグリールに較べて安価なスタードラグリールも魅力となります。
重要なことは、使用するリールを最大限に使いこなすことであり、常に最高のコンディションに調整しておくことです。常に自分の設定するドラグ強度を正確に得られることが、最も重要なことです。
スタードラグリールにしろ、レバードラグリールにしろ、そのリールの持つ能力の範囲内で使用することが肝要です、例えば、30ポンドクラスリールに80ポンドラインを使用し130ポンドクラスのリールと同程度のパワーを得ようとすることなどは到底無理なことです。つまりリール、ライン、ロッドの三つのバランスがとれていてこそ、最大のパワーが発揮できるものなのです。
IGFAラインクラス |
ストライキングドラグ強度 |
130LB (60Kg) |
12kg〜18kg |
80LB (37Kg) |
7kg〜11kg |
50LB (24Kg) |
5kg〜7kg |
30LB (15Kg) |
3kg〜4.5kg |
ドラグ設定
さて次に、リールの使用方法で最も重要なストライキングドラグは、通常、ライン強度の20〜30%に設定しますが、ドラグ値のはかり方次第でその数値は2倍以上の開きが出てしまいます。
リールのドラグを、希望するストライキングドラグに調整するには、少なくとも必要最大限のスライキングドラグと同程度以上のレンジを持つ正確なバネ計りを用意します。そして、まずリールをセットしたロッドを、ロッドホルダーに固定します。
ダブル調整方式のレバードラグリールについては、まずメインレバーをストライキングポジション(例えばペン社のインターナショナルを例にとると、この位置はストライキングストップボタンの少し手前となります。
バネ計りでラインを引っ張り、設定しようとする強度のところでドラグが滑り始めるまで、プリセットドラグを操作し調整します(プリセットドラグを調整するときには,必ず一度メインレバーを一度フリーの状態に戻してから調整します)。
この時」スー」と引っ張って計測するか、「ジャー」と引き出して計測するかによって大きくドラグ値が変わってきます、また引っ張る時のロッドとラインの角度によってもドラグ値は変わってきます。
適切なドラグ値というのはストライクの時の状況に一番近い状態で調整するのが望ましくその方法はロッドを固定した状態で、ルアーを引いている時と同じ位の角度で、カジキがストライクしてきたときにリールからラインが引き出されるのと同じ位のスピードで計るのが本当のドラグ調整です。
又、この時予め手でラインをリールから「キュ」引き出して巻取り、また「キュ」と引き出して巻き取るという動作を繰り返し、ドラグを暖めてから計測することを忘れてはなりません。
「スー」と引き出して計ったドラグのまま今度は「シャー」と勢い良く引き出して計りの数値を読めば、その2倍以上も違う数値に納得されるはずです。
「スー」と引っ張って調整したドラグ値は本来のストライクとは状況が全く違う為予想以上に高い設定値となっており、こうして設定したドラグ値でストライクを取れば、明らかにラインブレイクを発生させる原因となります。
又、ファーストランで300mもラインが出されれば、当然スプールの径が減ってくる分ドラグ値は反比例して高くなるのでラインは完全にブレイクしてしまうでしょう。 ファーストラン中のラインブレイクの原因はドラグ値の設定方法を勘違いして設定した結果であることが大多数です。
また、スムーズなドラグ機能を持つリールは、このドラグ調整の際にロッドチップが上下にガタガタと揺れるようなことがありません。
又、ドラグポジションが設定する都度変化するような場合は、すぐにオーバーホールに出すべきでしょう。
ラインキャパシティ
リールのラインキャパシティー(糸巻量)各ライン・クラスに対応するりールそれぞれに、最低600m以上を確保したいものです。カジキのファーストランは、通常200m前後の場合が多いようですが時には500mにも及ぶことがあります。800m以上の糸巻量があれば、まず心配はないでしょう。
ポイントまでの移動時
ポイントまでの移動時には、ドラグ内への海水の浸入を防ぐ為にドラグをストライクポジションにセットしておくことをお勧めします。
メンテナンス
リールのメンテナンスは、釣行の後には、必ず海水や潮風による塩分を取り除くようにして下さい、それもすぐに行うことです。ポイントはドラグ内に水が入らないようするだけです。ドラグを目一杯に締め付け、ドラグ内に水が入らないようにして、塩分を洗い落とします。完全に乾燥させた後、指定箇所にリールオイルを適量注油しますが、これは毎回する必要はありません。必要以上にあちこちに注油すると、クラッチ板に油がしみ込み、ドラグが滑りやすくなることもあります。(収納する際にはドラグの固着を防ぐためにフリースプールにします)